公開 2024年11月22日  I 更新 2024年11月22日

ベトナムで勤務するための外国人労働者に関する規制 ~外国人労働者の任命・企業内異動・出向・採用を中心に~

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目次

ベトナム現地拠点や、ベトナムの100%ローカル会社で勤務している日本人の数が増加しています。主には、企業内異動(親会社からの命令での転勤・出向の場合を含む。)や現地採用という二つの方法に大きく分かれます。各形態に応じて(雇用契約等の成立に関する法的な内容)、労働者への待遇、いずれの準拠法が適用(日本法か、ベトナム法か)されるか又はベトナムでの外国人労働者に求める必要な手続等が異なります。しかしながら、多くの労働者は、これらの問題について知識も経験もないことが多いものです。 本稿では、ベトナム現地法人での外国人労働者の取り扱い方法等についてそれぞれ比較しながら法的な注意点・問題点を説明します。

 

01 - ベトナム現地法人での外国人労働者の取り扱い方法について

 

ベトナムで勤務するための日本人を含む外国人労働者(以下「外国人労働者」という)は、以下の形式で労働に従事することができます:

  •      雇用契約の履行
  •      企業内異動
  •       経済、商業、金融、銀行、保険、科学技術、文化、スポーツ、教育、職業教育、医療分野に関連する契約または合意の履行(出向
  •      ベトナム法人とのサービス提供契約の履行(外国人労働者がサービス提供者である場合)
  •      サービスの営業
  •      ベトナム国内で活動が認められている外国の非政府組織や国際組織での勤務
  •      ボランティア
  •      拠点設立準備
  •      管理者、経営者、専門家、技術労働者
  •      ベトナムでのプロジェクトや請負契約の履行
  •      ベトナム社会主義共和国が加盟している国際条約に基づき、ベトナムでの就労が認められた外国代表機関の構成員の親族。

 

02 - 外国人労働者の社内異動・任命

 

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企業内異動の要件

 

企業内で異動する外国人労働者とは、例えば在日本親会社から在ベトナム子会社に異動して、その管理者、経営者、専門家、又は技術労働者として勤務する者です。企業内異動の外国人労働者は、異動前に少なくとも連続して12か月以上、雇用元(親会社)での勤務経験が必要です。

 

  【企業内異動の要件】

 

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企業内異動における雇用関係

 

上記のとおりに、企業内異動の外国人労働者は、親会社との雇用契約を維持しつつ、ベトナムの現地拠点に任命する(任命状が必要)、又は出向する(出向契約が必要)形で、ベトナムにて勤務することになります。

企業内異動の外国人労働者は、日本の親会社との雇用契約をそのまま維持するため、労働条件や、待遇等について、日本法に基づいて日本での雇用契約関連規制が適用されます。また、それに基づき、給与の支払い元は、ベトナム現地法人ではなく、原則的には日本の親会社になります。日本の親会社は、現地拠点に派遣する外国人労働者の人件費をベトナム現地拠点に負担させたい場合には、その人件費の負担に関する親会社と現地拠点との間の契約・合意書面を締結する必要があります。(※人件費には、給与、手当、住宅の賃貸費用等を含みます。)

 

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企業内異動に関する注意点

 

   企業内移動の場合でも、以下の②に定める場合を除き、ベトナムで勤務するためには、ワークパーミットを取得する必要があります。

    【ワークパーミットの取得に関する手続き】をご参考ください。

   ベトナムのWTO(世界貿易機関)へのサービス承認リストにおける11のサービス分野ビジネス、情報、建設、流通、教育、環境、金融、医療、観光、文化・娯楽、運輸)に該当する企業内異動の場合は、ワークパミットを取得する必要がありません。ただし、ワークパーミット免除の承認書を取得する必要があります。

ワークパミット免除の承認書の取得手続き】をご参考

   企業内移転の外国人労働者は、ベトナムでの社会保険に加盟する必要がありません。企業内移転に該当しない場合には、ベトナムでの社会保険に加盟する必要があり、会社と労働者のその分の負担も大きくなります。そのため、労働者は、ベトナムに勤務する前に、企業内移転に該当するかどうか、それに応じてベトナムでの社会保険の負担が必要かどうかという点について事前に確認することをおすすめいたします。

 

03 - 外国人労働者の出向(派遣)

 

企業内異動に該当しない場合においても、日本人をベトナムに派遣して働いてもらいたいというニーズは少なくないです。例えば、日本人の銀行員が海外に出てし、海外でのビジネスチャンスをアプローチするために、ベトナム国内の銀行(関係者・協力者)に派遣するケース等です。このような関係者間での人材派遣については、以下の点に注意する必要があります。

   ベトナムで勤務するまでにワークパーミットを取得する必要があります。

   社会保険の免除対象に該当しないため、ベトナムでの社会保険に入る必要があります。

   人件費については、原則的に日本の雇用先が負担する必要があります。ベトナムの関係者に一部負担させる場合には、契約や合意文書の締結等の書面化が必要です。ベトナムの関係者が、日本の雇用先の代わりに、外国人労働者のベトナム国内での銀行口座に一部又は全部の給与を代わりに支払うことは可能です(支払代行)ので、外国人労働者の希望に応じて、一部又は全部の給与をベトナム国内においてベトナムでの通貨であるベトナムドンで受け取ることができます。

   企業内異動と同様に、日本の雇用先との雇用契約をそのまま維持するため、労働要件や、待遇等については、日本法とその日本での雇用契約が適用されます。

 

04 - 外国人労働者の雇用

 

ベトナムでの雇用主(現地法人、支店、駐在員事務所等)は、直接外国人労働者と雇用契約を締結することができます。外国人労働者は、直接ベトナムでの雇用主と雇用契約を締結する場合は、ベトナム法を厳守する必要があり、ベトナム労働法に定める労働基準や最低待遇なども守る必要があります。

 

4 -1

資格に関する要件

 

          ベトナムで勤務することを認める外国人労働者(雇用の場合)は、以下の管理者・業務執行者、専門家および技術者のいずれかの資格に該当する必要があります。

役職

条件

管理者

企業法59/2020/QH144条第24項(※)に基づく企業や組織の管理者、または長・副長に該当。私人企業主、社員総会の会長、取締役会の会長、取締役、社長など

※企業の管理者とは、個人事業の管理者および会社の管理者を指し、具体的には、個人事業の主、合名会社の構成員、社員総会の会長、社員総会の構成員、会社の会長、取締役会の会長、取締役、社長または総社長、および会社の定款に基づくその他の管理職に就く個人を含みます。

業務執行者

企業の支店や事業所の長、または少なくとも1つの部門を管理し、組織の長の指示に従う者。

専門家

大卒以上、または同等の学位と関連業務で3年以上の経験を持つ外国人、あるいは5年以上の経験と資格証明書を持つ外国人。なお、特例もあります。

技術者

1年以上の技術の専門教育を受け、関連業務で3年以上の経験を持つ者、または関連業務で5年以上の経験を持つ者。

 

4 -

最低賃金

 

地域ごとの労働者の月額最低賃金と時間最低賃金の規定は以下のとおりです

地域

月額最低賃金 (単位:ドン/)※月給

時間最低賃金 (単位:ドン/時間)※時給

1地域

4.960.000

23.800

2地域

4.410.000

21.200

3地域

3.860.000

18.600

4地域

3.450.000

16.600

※地域I、地域II、地域III、地域IVの地域リストは政令No. 74/2024/NĐ-CPの付属書で規定されています。

※最低賃金の規制は、ベトナム人労働者と外国人労働者の両方に適用されますが、基本的に一般労働者のベトナム人をベースにして定められています。外国人の場合は、一般労働者ではなく、「管理者、業務執行者、専門家又は技術者」のいずれかに該当する必要があります。その場合の学歴、職歴等を十分に反映した賃金を設定する必要があります。

 

4 - 3

公的な保険の加盟

 

外国人労働者に適用される公的な保険は、以下の通りになります。

種別

2018121日~20211231

202211日以降

雇用主負担

労働者負担

合計

雇用主負担

労働者負担

合計

社会保険料(労災保険料を含む)

3.5

なし

3.5

17.5

8

25.5

※複数の雇用主と労働契約を締結する外国人労働者の場合は、最初の労働契約についてのみ、労働者と雇用主が社会保険料を納付し、以降の労働契約では社会保険料の納付は不要です。ただし、労災保険および職業病保険に関しては、いずれの雇用主も締結した労働契約について保険料を納付しなければなりません。

※ベトナムから帰国する場合に、年金受給者や月額社会保険給付受給者は、他の人に年金や社会保険給付の受け取りを委任することができます。また希望する場合は、一時金として給付を受け取ることもできます。

 

4 - 4

労働時間、休憩

         

          ①   労働時間

通常の労働時間:

通常の労働時間の規制は18時間以内、週48時間以内までしか、使用者は労働者に対し労働を命じることができないというものです。使用者は労働者に対し日または週単位で労働時間を規定し、通知することが必要になります。週単位の場合、110時間、週48時間を超えてはいけません。なお、週40時間労働も奨励されています。

時間外労働

  • 時間外労働は通常の労働時間外の労働をいい、労働者の同意が必要になります。112時間、月30時間、年200時間以内という制限があり、一部業務では300時間以内までの時間外労働を命じることが許されています。
  • 緊急時には時間外の制限が適用されないという例外もあります。

休憩時間

  • 168時間勤務の場合、少なくとも30分の休憩、深夜勤務では45分の休憩が必要となります。シフト制の場合、次の勤務に入るシフト間に12時間は間を空ける(休憩)必要があります。

週休

  • 毎週24時間の連続での休憩が必要であり、特定の事情がある場合は月平均で4日以上の休日を保証することが必要です。

祝日・正月

  • 年間10日の有給での祝日があり、年によって日付が異なりますが、太陽暦と旧暦の正月などを含みます。

年次休暇の増加

  • 同一使用者のもとで5年間労働を継続するごとに年次休暇が1日追加されます。

時間外労働賃金

  • 時間外労働賃金は通常日150%、週休日200%、祝日・有給日は300%以上の割増率により賃金を支払う必要があります。夜間労働には追加でさらに30%を支払わなければなりません。

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